自閉スペクトラム症にまつわるエトセトラ

自閉スペクトラム症(ASD)についての障害特性や支援に関する情報を発信していきます

CMのフレーズを真似するのは、そのCMが好きだからではない

 

あろえです

 

 

ASDのお子さんで、突然CMのフレーズをつぶやいたりするケースはありますか?

また、こちらが話したことをすぐに繰り返して、話しをするという行動もありますよね?

 

それら、おうむ返しのような反応をエコラリアと呼んでいます。

 

 

 

とくに、前者のようなCMのフレーズや、よく聞く音楽を突然歌うなどといった、いわゆる遅延性のエコラリアの反応が見られるお子さんは、長期記憶の特性が色濃く影響している傾向があります。

 

長期記憶の特性とは、一度覚えた経験や物事を忘れないというものです。つまり、良いことも悪いことも忘れにくいということです。

 

そして、この特性が強いお子さんは、何かの条件が重なると、記憶していたフレーズや行動を再現することがあります。これを誘発された行動の機能として、考えることができます。

 

 

以前記憶していたことというのは、具体的に本人さんだけしか分かりません。

何日前、何ヶ月前、何年前のことなのか、他者から見ても分かりにくいものなのです。

 

また、そういった再現の行動は、一定の条件が重なることで再現されるものです。

条件に含まれるものは、人、物、場所、時間、言葉、そういった様々な物が複合的に条件として成り立ちます。

 

ASDのお子さんは、全体よりも細部に注目する特性があります。

場所や物といっても、我々が感じていることとは、全然違った物を見ていることもあります。

なので、何かの条件によって誘発されて、行動が発生した際も、その条件は何なのか、分かりにくいため、親や支援者は困ることが多いです。

 

 

例えば、自宅やその他の場所で過ごしている際、

余暇を過ごしていたが、突然、隣にある壁を叩くという行動が発生したとします。

 

目に見えて分かる条件(声や物が壊れたなど)であれば、対処はしやすいですね。

 

しかし、それ以外が原因だとすれば、困ってしまいます。また、何かを拍子に、壁を一度叩いたという

行動が、本人の経験になり、叩くという行動自体を繰り返し、それが習慣化され、本来の叩いた行動の要因が分かりにくくなることもあります。

 

 

それでは、こういった場合、どのような対応が必要となるでしょうか?

 

まずは、行動の要因を1つずつアセスメントし、それを除去または変更をすることです。

 

また、叩くという行動が継続して発生してしまった際には、叩くという行動を行った場の環境を変えるだけでも、大きく行動は変化する可能性はあります。

 

例えば、DVDを視聴していた際に壁を叩くという行動であれば、座席の向きを変えてあげるのも1つの方法です。

 

我々にとっては、方向を変えられただけで、わずかな変化としか思えませんがASDのお子さんには、大きな変化と感じる可能性はあります。

 

アセスメントと変化を与える。

こういった対応をキーワードに、叩くという行動を無くすのではなく、減少させるというスタンスで支援していく必要があります。

 

 

はじめのタイトルの内容に戻りますが、

フレーズを真似するというのは、好きだから、ということよりは、記憶の特性が影響しているという要素が優先されているということなのです。

 

また、フレーズの内容については、歌いやすい、口ずさみやすい内容、視聴する回数が多いCMの中から、本人さんの粗大・微細運動に合わせた口の動きとマッチする事で、フレーズの内容が決定するのかなと思われます。

 

もちろん、CMキャラクターのマスコットや女優さん、はたまた、CMの色の配色などが影響している可能性も少なからずあるとは思います。ASDのお子さん独特の情報の処理の仕方がありますので、単純に好きだから、という理由だけではないということなのです。