自閉スペクトラム症にまつわるエトセトラ

自閉スペクトラム症(ASD)についての障害特性や支援に関する情報を発信していきます

癇癪が頻繁に起こるケースについて②

 

前回の続きです。

 

前回の記事↓

https://www.aroeasd.work/entry/2019/09/26/154054

 

 

前回の記事で、

今回の癇癪を起こしたケースの場合、要求の行動が癇癪という形になって表出されていますよ。

っと書かせていただきました。

 

 

では、長く定着してしまった要求の行動をどのように対処していけばよいのか?

 

本人さんは、癇癪の行動が強化された状態となっているため、本人さんの癇癪という行動を無くすというのは、難しいかもしれません。

 

しかし、無くすのではなく、望ましい行動を強化する、上書きするというスタンスでいくことが良いかもしれません。

 

つまり、望ましい要求を学習してもらう場面を作っていくということです。

そして、望ましい要求ができる場面をじゃんじゃん行い、成功体験を増やしていきます。要求を伝えたという経験を積むことで、本人さんにとっても大きな満足感となります。

 

 

要求を伝える初歩的な方法は、カードと具体物の交換をすることです。

 

これは、PECSという手法に基づく話となります。

これについて解説するととんでもないことになりますのでしませんが、考え方は同じです。

 

 

PECSは絵カード交換式コミュニケーションシステムの頭文字であり、イラストが描かれたカードを相手に渡すことで、言葉が出せない代わりに自身の要求をするというものであり、研究に基づいた手法となります。

PECSにより、ASDの方でも自立度の向上や社会生活に適応した生活を送っているなど、現在でもたくさんの成果をあげております。

 

 

その一番最初にする指導法として、カードと具体物の交換ということです。

今回のケースであれば、とにかくこの初歩の流れを習得すればよいと思います。その先もありますが、今の段階では置いといてください。

 

 

まず、準備するものは、イラストが描かれたカードです。

 

私のような施設の指導員であれば、すぐにでもパソコンとラミネートを使ってガンガン作れるのですが、一般家庭ではそうはいきません。

 

しかし、書店ではPECSに関連した書籍が置かれていると思います。周辺にもしかしたら、たくさんイラストカードが初めからある本もあると思います。

そういったものも活用するのもよいです。

 

 

準備が整いましたら、場面の設定です。

 

日常では要求が必要な場面がたくさんあります。

 

例えば、ご飯を食べる時はスプーン、出かけるときは靴、テレビ見たいならリモコン、数えたらキリがありませんね。

 

そして、要求しなければ獲得できないという状況を作りましょう。

 

 

 

例えば

テレビが消えてる状態。

リモコンがいつもの場所にない。

しかし、「リモコン」のカードが代わりに置いてある。

本人がカードを手に持ち母へ渡す。

隠し持っていた、または高い位置に置いていたリモコンをすぐに本人へ渡す。

 

こういった流れです。これを様々な場面で何度も繰り返し行ってください。

 

 

ポイントとして、

カードを母へ渡してもらうときは、始めのうちは、ヒントをたくさん出す。手を差し出すなど。

あとは、できれば、もう一人の黒子役が本人さんの手を添えて、母にカードを渡すまでガイドを行う。

・カードを母へ渡す際は、本人さんが言っても言わなくても、「〇〇ください」という言葉をかける。

カードを受け取ったらすぐに要求したものを獲得してもらう。

 

です。このポイントは必ず守ってください。

 

 

以上の流れが本人さんが望ましい要求をするための流れとなります。

本人さんは、「ちょうだい」「ねぇねぇ」つんつん。など、一般的な要求の仕方が困難です。

だから、本人さんに合わせた要求の仕方を学習してもらうことが必要となるのです。

 

カードを使うというのは、抵抗があるかもしれませんが、PECSを活用しているASDの方も初めはこういった流れからスタートさせ、そして今では、要求するものが「ブック」という形になって、カードがずらりと並んでいるものを所持して生活しています。

これがあることで、ASDの人たちは生きていく上で最強のアイテムとなり、この社会を生きているのです。

 

まずは、本人さんもぜひともチャレンジしてみてください。時間はかかるかもしれませんが、きっと望ましい方向に進むと思います。

 

次回の記事は、他の対応方法についての記事です。