自閉スペクトラム症にまつわるエトセトラ

自閉スペクトラム症(ASD)についての障害特性や支援に関する情報を発信していきます

「無視をする」という対応をしてはいけない。

 

困った行動が起きた時に対処するための支援の一つの方法として、「無視をしましょう」という対応があります。

 

私は、「無視をする」という対応に大きく反対しております。

 

それはなぜか?結論から先にいいますと、

 

「無視をする」という対応を取ることで、消去バーストという大きな副作用が発生し、より行動が拡大するからです。

 

 

では、どういうことなのか、解説していきます。

 

 

まず無視をするという行動は、ABAの中では、消去という用語として使われています。

 

消去の仕組みとして、消去という行動をとることで、他者からの注目の獲得を得ることができなくなり、時間の経過とともに、記憶から薄まり段々と行動が減少していくというものであります。

 

しかし、この消去というのは、一概に有効とは言えません。例えば、長期記憶の特性が強いお子さんに対して消去をした場合はどうなるのでしょうか?

 

ASDの方で記憶力が良いという方はたくさんいます。

そのため、ある行動に対して消去をし、注目の獲得が得られなかったところで、簡単には消去されません。記憶力が良いので、長期間行動を起こすことでしょう。

長期間というのは、個人差がありますが、1年、2年、3年も続くなんてザラにいます。問題行動を何年も耐えられますか?それでも消去をしつづけますか?

 

さらに、お子さんによっては、消去という対応を取られると、さらに他者へ注目を得るために、行動が強くなる場合があります。これを消去バーストといいます。

消去バーストの状態になると事態はさらに深刻となるでしょう。

 

 

それでも、消去の対応を続けるのであれば、その方法を解説します。

やり方は簡単です。問題行動が消失するまで、ただひたすら消去をし続ける。それも完全に、周囲の人も含めて徹底的に消去をする。以上です。

 

例えば、「常にテレビが付いている状態じゃないと気が済まず、テレビを消すと大声で泣き叫ぶお子さん」という事例があったとします。

 

仮に自宅で大事なお客さんが来るため、テレビを消さなければいけない時があったとします。

 

お客さんが来る。テレビ消す。子どもが泣いてる。親は無視してお客さんと話している。何も知らないお客さんはその状態に耐えられるでしょうか?また、親自身も含めて自分の子どもが泣いてる状態をただ黙って見ないフリしている行動に耐えられるでしょうか?

この状況を見たお客さんは、もしかしたらお子さんに話しかけてしまうかもしれません。親は耐えられなくなって、少しだけ話しかけてしまうかもしれません。

もうこの時点で消去の対応は不成立です。一からやり直しですね。

 

こういったように、消去という対応を成功させるのには、非常に計画的に徹底的に、周囲を巻き込み、そして道徳的に、非常に難しさがあるというのです。だから、消去(無視をする)という対応をとってはいけないということなのです。

 

なので、周囲の相談者から無視をしましょう、と返答があった場合には、少し考えてみてください。そしてこの記事のことを思い出してくだされば嬉しいです。

 

どうすれば?という部分については、過去の記事でも載せていますが、改めて少しずつ掲載していきたいと思います。