自閉スペクトラム症にまつわるエトセトラ

自閉スペクトラム症(ASD)についての障害特性や支援に関する情報を発信していきます

カームダウンエリアを作るだけでは、何も解決しない

 

カームダウンエリアと言うのはご存知でしょうか?

 

カームダウンというのは、つまり「休憩」ということです。

よく挙げられるのが、教室の片隅に段ボールの囲いがあって、中にはクッションがあって、何かパニックが起きた際にそこに入ってもらう。という事例を聞いたことあるのではないでしょうか。

また、そういった対応を今現在しているでしょうか。

 

確かにこういったカームダウンエリアというのは必要です。

しかし、カームダウンエリアをどのように使うのか、それが1番重要となります。

 

カームダウンエリアと言うのは、ただ単に、パニックになった際に避難する場所と言う機能だけではありません。

必要なのは、休憩したいと言う時に、それを支援者へ伝えられるかどうかが大事です。つまりは休憩するスキルと言うことです。

 

また休憩する際には、いつまで休憩するのかというのも教えていかなければいけません。

パニックになったから、とりあえずそこに行ってもらい、そしてパニックが落ち着くまで休憩をすると言うやり方では、逆にいつまで休憩をすればいいのか、いつまでその場所に入ればいいのか、というのが分かりにくくなり、さらに不安が広がります。

なので、いつまでというのを教える際には1つの方法として、キッチンタイマーなどを使って教えていきましょう。

 

カームダウンエリアは、いつ入るのかというのも重要となります。

遊んでいる時に特に状態が変わっていないのに突然入るというのはあまり望ましくありません。

 

そういった自由に出入りすると言う事は望ましくないということです。

ASDの方は空間の整理統合が苦手です。

なので、活動する場所を明確に分けてあげることで、カームダンエリアの機能というのは初めて果たされるということになります。

例えば、遊んでいるときにカームダンエリアで過ごしていたとした場合、本来パニックになった際に入るべき場所が遊ぶ場所として機能してしまうことになり、カームダウンエリアとしての役割はなくなることでしょう。

それだと、せっかくカームダウンエリアを作ったのに意味がなくなってしまいます。なので、カームダウンエリアというのは、支援者が管理された場所として設定していく必要があります

 

 

そもそも、よく本などで目にするカームダウンエリアは、なぜ段ボールやパーティションで、そして端っこにあるといった環境になっているのでしょうか。

 

これは、本人にとって刺激的な情報を遮断するための役割ということです。

つまりは1つは視覚的な情報の遮断です。

視覚的に刺激のあるものを見えないようにするためにパーティションや段ボールなど様々なものを使っているということです。

また、耳での情報に関しては、イヤーマフが良いかもしれません。

イヤーマフに関しては、完全には外部からの音を防ぐことが難しいかもしれませんが、つけていることによる安心感と言うのも得られるので、そういった面ではイヤーマフと言うのは効果が期待されます。

もちろん完全には期待されませんので過信するのはやめましょう。

 

カームダンエリアの中には椅子などを設置することを個人的にはお勧めしています。

椅子と言うのは空間の整理統合が苦手なASDのお子さんにとっては、非常にわかりやすいものとなっております。

椅子は1人用の幅となっており、1人が座ると言う視覚的な指示となっているため椅子はわかりやすいです。

反対に椅子がなく床に寝転がるといった環境はリラックスできるというふうに思うかもしれませんが、それはそれで1つの方法ではありますが、逆にそのカームダンエリアのなかのどの空間に居ればいいのかわからないと言った場合には、やはり椅子などのものが必要ではないかと思います。

 

カームダウンエリアに毛布などを置く方もいると思います。毛布というのは人間のようにはいきませんが、温かみがあり、ふわふわしており抱き心地としても良いかなと思います。

なので、人を抱きつくという行動に対しての代替えのアイテムとして、毛布を使うというのも1つの方法だと思います。

 

 

以上のようにカームダンエリアでも様々な環境的な工夫が必要です。

本人さんがどのような刺激に対して反応があるのか、気持ちが安定するために人ではなくて代替えのアイテムを使用して何が必要なのか、というのをしっかりとアセスメントして、それをカームダンエリアに集約するというのも1つの方法であります。

後は前述した通り、どの場面でカームダウンエリアに入るのか、いつまでカームダウンエリアに入るのか、カームダウンエリアから出たら次に何をするのか、そういった具体的な指示があることで初めてカームダウンエリアというのは、機能されるということです。

ですので、カームダウンエリアを作ったらそれで安心するのではなくて、具体的な設定を考えていくことも忘れてはなりません。