自閉スペクトラム症にまつわるエトセトラ

自閉スペクトラム症(ASD)についての障害特性や支援に関する情報を発信していきます

「リビングに布団を敷く」という行動について考える(トークンシステムの活用)

 

 

こんにちは、あろえです。

 

 

前回の記事では へびいちごさん のお子さんの行動について考えていきましたが、もう少し違った視点や障害特性などなど、追記してみようかなと思います。

 

ここからは、完全に私の主観となりますので、全てが正しいとは限りません。この記事の内容から、当てはまること、実践できそうなこと、をピックアップして解釈していただければと思っています。

 

では本題です。

 

まず、行動というのは、どうしても悪い部分が目に入りがちになってしまいますが、良い部分というのをしっかり見てあげて、そしてその行動を強化してあげることが大切です。

 

実際、へびいちごさんは、お子さんがお手伝いをしたことに対して行動を強化していました。とても素晴らしいことだと思いますし、今後も実践していくべきだと思います。

 

そうすれば、次は、行動の強化の仕方について考えていきましょう。

 

行動の強化には2つの方法があります。

 

一つは「即時強化」です。その名の通り、望ましい行動をした後に、行動を称賛するため、好子(本人さんの好きな物や事)をすぐに獲得してもらい、対象となる行動を強化する事です。

 

もう一つは、すぐに行動を称賛するのではなく、2回に1回、3回に1回、、、、、と、つまりは時々褒めるという方法があり、これは「間欠強化」と言います。

 

行動を強化する手順としては、最初は「即時強化」を行い、段々と「間欠強化」へ移行させていくことが重要です。

 

 

 

行動を強化するためには、この考えだけでは足りません。

 

ASDの方は、物事を見て理解することが得意です。

 

称賛される過程を視覚的にすることが大事であり、その一つとして、トークンエコノミーシステムを用います。

 

トークンエコノミーシステムとは、簡単に言えば、お店のポイントカードを思い浮かべていただければ良いです。

 

お店では、基本的には商品を買えば、ポイントがもらえて、ポイントが貯まると、何かと交換できます。

 

これを置き換えると、

商品を買えば(望ましい行動を行えば)

ポイントがもらえて(トークンシンボル)

ポイントが貯まると

何かと交換できる(好子を獲得できる)

 

となります。

 

自宅でもトークンエコノミーシステムの仕組みで行動を強化するときは、必ず本人さんへ視覚的に知らせなければいけないことがあります。

 

それは、「どのような行動を行えば、トークンシンボルを獲得できるのか」「トークンシンボルは何個貯めれば良いか」「好子は何がもらえるのか」です。

 

「どのような行動を行えば、トークンシンボルを獲得できるのか」とは、

これは強化したい行動になります。一つだけでなくても良いのですが、初めの段階は、一つから始めて見ましょう。

今回であれば、自分の使った食器を片付けたら、が、いいと思いますが、ここでさらに一押し。

片付ける。という情報だけでは本人さんには伝わらない可能性がありますので、この場面で(夕食後)、何を(使ったお皿全て)、どのように(テーブルの上のお皿を台所の決められた箇所へ)、どうする(お母さんへできたことを報告してもらう)

 

といったように、ここまで具体的に設定することで、本人さんも分かりやすいですし、支援する側のお母様も、評価をしやすいでしょう。

 

一つの行動に慣れてきたら、対象となる行動を増やしていくことが必要ですが、その際重要なのは、お母様自身の思いで、「こうしてほしい」行動に注目するのではなく、本人さんの実際の生活を見て、「もう少しでできる」行動に注目し設定して見ましょう。

 

そうすることで、ハードルも低く、成功につながりやすくなります。

 

例えばですが、ツイートの中に、「リビングに布団を敷いてしまう」という行動がありました。この行動は、望ましくない行動として見てしまいがちですが、「布団を敷く」という行動ができるのであれば、その部分に焦点を当ててみるのも良いかもしれません。

 

行動自体は望ましいのですが、場所が異なるために、一気に望ましくない行動として見られてしまいます。

なので、敷く場所を教えてあげなければいけませんね。

 

まず、こだわり行動として続いている様子ですので、炊飯器の時と同様に、物理的な構造化(布団の種類・色を変える、ベットにする、ベットを手の届きにくい場所に保管する、敷いてしまう場所にあえてテーブルなどの物を置いておく)を行うことが必要となります。

 

そして今までのリビングに布団を敷くという望ましくない行動をリセットした上で、新たに学習をしてもらいます。

 

場所を教える際は、例えば、布団の写真と引いてほしい場所を写真で視覚的に説明することが必要です。

あとは、布団を敷いてほしい場所に、テープか何かで枠を作り、その枠の中に布団の写真を貼っておくといったような説明も必要かもしれません。

 

場所の他にも、「いつ」布団を敷くのかも教えても良いかもしれません。

この場合には、スケジュールが必要となります。可能な場合には、ぜひとも敷くタイミングを教えてあげましょう。

 

この段階で、本人さんがどのように変化するかは分かりませんが、もし1回でもできた場合には、しっかりと称賛してあげましょう。称賛を続けたら、いずれ、それが習慣化となります。当たり前の行動として、「自分の布団は自分で敷く」という素晴らしい行動をするお子さんになることが期待できます。

 

本人さんの障害特性を見ると、初めから望ましい方法で支援していかないと、以降は間違った学習をしてしまう場合がありますので、入念な下準備を行い、実践してみるのも良いでしょう。

 

 

「トークンシンボルは何個貯めれば良いのか」についてです。

 

トークンシンボルとは、つまりはポイントです。

ポイントが溜まり、ご褒美がもらえる。という流れです。

このご褒美(好子)がもらえるまでに、長すぎても、短すぎても行けません。

 

初めの段階では、1個から始めるのをお勧めします。

というのは、「ポイントを貯めるご褒美がもらえる」までの手順を学習してもらうことが優先です。

この流れ自体をまずは把握してもらうことが重要です。流れを把握することで、始めて本人さんはトークンシステムを使うメリットを感じられるようになるのです。ここからが本番でしょう。

 

そして少しずつトークンシンボルの貯める数量を増やしていきます。その際は、本人さんの様子を見ながらやっていきましょう。ただ単に増やしてばかりでは本人さんも飽きる可能性だってあります。そうなると、トークンシステムの魅力というのはなくなり、行動自体にも変化が現れるかもしれません。なので、基本はハードルを下げて、長い目を見てトークンシンボルの数量を検討していきましょう。

 

 

「好子は何がもらえるのか」

 

トークンシステムを使う上で非常に大切な部分となります。

本人さんの行動の動機付けとなるものになりますので、この好子というのは、確実に高いレベルのものでなければなりません。

 

そして好子というのは、食べ物などが多いようですが、何もそれだけではありません。

 

例えば、好子が〇〇のお店で買い物であったり、母に抱きしめてもらう、ハイタッチも講師として設定することは可能となります。

 

個人的には、基本はお菓子やアイスなどの食べ物がやりやすくオススメと感じています。

というのは、食べ物というのは、食べることでなくなります。つまりは始まり(獲得)と終わり(食べ終わる)が明確であるため、好子獲得後に次へ移りやすい可能性があります。

 

仮に、歌の絵本で遊ぶ、というのを好子として設定した場合、好子を獲得した際に、いつ終わりなのかが分かりにくくなります。もしもモノを好子として設定するならば、具体的に時間を設定しましょう。例えば、タイマーで1分間セットし、タイマーがなったら、母へモノを渡す(終わり)ことを教えてあげる必要があります。本人さんが使用していた好子を本人さんから母へ渡すという行動はハードルが高いので、注意していかなければいけないですね。

 

 

記事はこれで終了となります。

 

こういった形で、日常の問題行動に対して、障害特性や応用行動分析学の視点などから行動について私なりの考えを記載し情報提供をさせていただいております。

 

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